ひらがな、カタカナ、漢字、そして今ではアルファベットも使う日本語。複数の文字を使えるため、さまざまな表現ができる言語です。
しかし、それゆえに扱うのも難しいとされ、世界の中でも習得難易度はトップクラス。同じ言葉でも意味が異なる場合や、表記が異なると違う印象を与えることも。
そこで今回は意味は同じでも、表記に迷う日本語を紹介。馴染みのある食べ物についてなので、みなさんも予想しながら読んでいただけたらなと思います。
とんかつ?トンカツ?はたまた豚カツ?
とんかつの“とん”は、漢語の豚(とん)と、外来語の「カツ」を組み合わせた言葉。「豚カツ」でも問題ないように思えますが、表記しているお店はあまり見たことがなく馴染みがありませんよね。
となると、とんかつ、もしくは、トンカツ。
そこで、どちらが一般的に使われているのか、とんかつチェーン店を調べてみました。
ちなみに、メニューにはとんかつではなく、ロースかつやヒレかつと掲載されていることが多いので店名なども参考にしています。
まい泉
ヒレかつサンドが有名な『まい泉』。季節おすすめメニューで、「黒豚とんかつと海鮮ミックスフライ膳」と、とんかつで表記されていました。
松のや
安価な価格でとんかつを提供する『松のや』。店名のロゴにとんかつと表記されています。ロースかつ定食もかつ丼もすべて“かつ”で統一。
とんかつ新宿さぼてん
『とんかつ新宿さぼてん』は1966年に創業した老舗。こちらも店名のロゴにひらがなではっきりとんかつと表記。
かつや
リーズナブルな価格で、全国に幅広く展開している『かつや』。店名のロゴはとんかつ表記。しかし、メニューはロースカツ定食、ヒレカツ定食、カツ丼と、カタカナで“カツ”と統一されていました。
ちなみに、豚汁は“とん汁”と表記されています。
とんかつ和幸
定食メニューは、ライス、みそ汁、キャベツがおかわり自由な『とんかつ和幸』。こちらも店名の通り“とんかつ”表記。メニューは、ロースかつ御飯、ひれかつ御飯と、“かつ”はひらがなで統一されていました。
結果
5店舗調べたところ、すべてが“とんかつ”表記であることが判明。しかしメニュー名においては、ひらがなかカタカナで表現するかの違いはありました。
一説によると、東日本では「とんかつ」、西日本では「トンカツ」という話も。これはさらに深く調べてみると、また違う結果になりそうです。
そば?蕎麦?
「そば」と「蕎麦」に厳密な違いはないとされています。
ちなみに「そば」の場合は、小麦粉を原料として作られる「中華そば」や「沖縄そば」などほかの麺類においても使われる言葉です。
では本題に戻りますが、チェーン店のそば屋は、ひらがな、漢字、どちらが多く使われているのでしょうか。
箱根そば
小田急沿線を中心に展開している『箱根そば』。店名からもわかる通り“そば”表記。人気メニューである「かき揚げ天そば」も、そばはひらがなで命名されていました。
富士そば
『富士そば』は関東を中心に展開するチェーン店。店名、メニュー、どちらにおいても“そば”。ちなみに丼ものも取り扱っていて、かつ丼は「かつ丼」と表記されています。
小諸そば
駅構内やホーム上に店舗を構えているお店もある『小諸そば』。店名では“そば”と表記されていますが、メニューは「かけ」「たぬき」とそばという言葉は使われていませんでした。
ゆで太郎
『ゆで太郎』は店舗数も多くメニューも充実。そば、丼もの以外にも、中華そばがラインナップされています。いずれにせよ、“そば”はすべてひらがなで表記されていました。
“蕎麦”と表記するのはどんなお店?
ここまで、大衆向けのチェーン店を調べてきました。
そこでひとつ、疑問に思ったのです。
高級なそば屋であれば“蕎麦”と表記されているのではないのかと。
調べたところ発見しました。
日本一高い蕎麦と自称する『トリュフ蕎麦 わたなべ』です。一押しメニューの「トリュフ蕎麦」は3,800円。
蕎麦とカタカナが隣合っているのは初めて見ます。そして何より、しっかり“蕎麦”と表記されていました。
あくまで一例に過ぎませんが、老舗や高級店と呼ばれるそば屋は“蕎麦”、チェーン店の場合は敷居を下げるため“そば”と表記しているのではないかと考えられます。
焼き肉と焼肉
「焼き肉」と「焼肉」の違いは送りがなが入るだけで特に違いはありません。
日本語の表記としては、「焼き」と書くのが本来は正しいです。
しかし、読み間違いの心配がない場合は、送りがなを省略することが可能。
- 受け付け→受付
- 問い合わせ→問合せ
- 申し込み→申込み
このように「焼き肉」を「焼肉」と書いても一緒で、なんら問題はありません。
実際に焼肉屋の店名を調べても“焼肉”と表記するお店が多数。
- 焼肉きんぐ
- 焼肉ライク
- 七輪焼肉 安安
- 大阪焼肉・ホルモン ふたご
- 焼肉屋さかい
- 焼肉 ウエスト
- 焼肉 でん
- 焼肉ふうふう亭
- 焼肉チャンピオン
- 焼肉・冷麺ヤマト
全国展開するお店も、ローカルチェーンのお店も“焼肉”と表記しており、焼肉という言葉が今では浸透しているこがわかります。
場所によっても変わる日本語
ちなみに仙台の知人の話によると、牛タンは仙台においては「牛たん」と主にひらがな表記が用いられるとのこと。
同じ国内でも、地域によって表現が変わるのも日本語のおもしろいところですね。